ジョシュアは鏡の前に立った。
(喬書亞站在鏡子前)
鏡の中の少年は、小公爵ジョシュア‧フォン‧アルニムではなかった。
(鏡中的少年不是喬書亞‧馮‧阿爾寧)
俳優、マックス‧カルディだった。
(現在的他是演員,麥斯‧卡爾迪)
自分自身を演じる
扉が開いたとき、テオはテーブルに座り、向かい側の椅子を見つめていた。背後にある蝋燭が作り出した大きな影と会話をしているかのように、体を前に倒して。
(門打開的時候,特爾坐在桌子上,盯著對面的椅子看。像是跟背後的蠟燭光做出來的影子對話般,身體向前傾)
人の気配を感じてテオは後ろを振り向いた。
(突然感受到有人的氣息而回頭)
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「こんなに朝早く、どうしたんだ?」
(這麼早,有什麼事嗎?)
ジョシュアは扉のところに立ったままじっとテオを見た。五つを数えるほどの時間が過ぎ、ジョシュアは軽く眉を上げた。
(喬書亞就這樣站在門口緊盯著特爾好一陣子,挑起了眉毛)
「テオ兄さんも早起きですね」
(特爾哥也很早啊)
そう言いながら近づいてきたジョシュアは、テオの向かいにあった椅子に座った。テオが両手を組んだり解いたりしているのが見えた。テオが言った。
(一邊說一邊走近的喬書亞,坐到特爾對面的椅子上。感覺得到特爾有些局促不安。特爾道)
「眠れなかったんだ」
(我睡不著)
「何か心配でもあるんですか?」
(有什麼令你煩心的事嗎?)
「ぼくにも心配事がたくさんある」
(我的煩惱很多)
テオの口元に奇妙な嘲笑が浮かんだ。ジョシュアは微笑み返した。そしてテーブルの上にある飴の箱に目をやった。見慣れた箱だった。
(特爾嘴角揚起了嘲笑般的笑容,喬書亞也以笑容回應。然後他看到了桌子上的糖果盒,那是熟悉的盒子。)
「一つ食べてもいい?」
(可以吃一個嗎?)
ジョシュアは答えを待つことなく、飴を一つ口の中に放り込んだ。苦しみが口の中に広がったが、顔をしかめたりはしなかった。
(喬書亞沒有等待對方回答,拿了一顆糖放入口中。苦澀的味道在口中擴散,但表情一點也沒變(連眉毛也不皺一下))
テオはその様子を見ながら、こう言った。
(特爾看了他那副樣子,應了聲)
「ああ」
(恩)
ジョシュアの手がゆっくりと飴のふたを閉じた。テオの目がそれを追った。袖を止めているオニックスのカフス、そして黒いシフォンの下の手首が動きとめるまで。ジョシュアはわざと手をテーブルの上に置いた。首を少し上に向ける。
(喬書亞慢慢的關起糖果盒的蓋子。特爾的視線也就追著他的動作移動,從袖子上被用塙瑪瑙固定住的袖口,到黑色薄稠下的手腕動作。喬書亞故意將手放在桌子上,脖子稍稍向上抬起。)
「エニ兄さんがここへ行くように言ったんで来たんだけど。何か用でもあるんですか?」
(艾尼哥叫我來這裡,不知道有什麼事?)
それを聞いて、テオは安心したようだ。
(聽到這個,特爾才鬆了一口氣)
「別に」
(沒甚麼事)
「なら、話でもしようと?」
(那麼要不要聊聊?)
返事を聞く必要もないというように、ジョシュアは肩をすくめた。そして言葉を継いだ。
(沒有必要聽到對方同意,喬書亞聳了聳肩,繼續說道)
「もうすぐ姉さんの命日ですね」
(快要到姐姐的忌日了)
「……そうだな」
(……是啊)
「誕生日でもあるし」
(也是她的生日)
テオはこたえなかった。ジョシュアは飴をなめながら、つぶやくように言った。
(特爾沒有任何反應。喬書亞含著糖,喃喃地說著)
「姉さんの命日にこの城にいるのは二度目なんです。もう何年も前のことですね。そのせいなのか、実感がわきません」
(這是第二次在姐姐忌日時在城裡度過。已經是好久以前的事了,也因為這樣,特別沒有真實感)
表情のない目がジョシュアを見ていた。
(特爾沒有表情地看著喬書亞)
「姉さんがハイアカンにいて、誕生日には戻ってくるような気がするんです。目の前にテオ兄さんがいなければ、本当にそう思うはずです」
(要不是特爾哥在這裡,我總覺得姐姐還在海肯,生日的那天就會回來,這種感覺很強烈)
テオがぼそりと言った。
(特爾咕噥著說)
「何年も追悼式をしてきたから、ぼくはそんな風に感じはしない」
(已經辦了幾年追悼式了,我沒有那種感覺)
「そうでしょう。こういうときは、やはりぼくよりもテオ兄さんの方が姉さんの近くのいたんだな、と思います」
(果然是這樣。這種時候,比起我,特爾哥果然跟姐姐比較親近)
テオは唇にかすかな微笑を浮かべた。
(特爾的嘴唇露出了一絲微笑)
「夫婦だったんだから」
(因為我們是夫妻)
ジョシュアは鼻を歪めて笑った。
(喬書亞皺起(歪著?)鼻子笑著)
「ぼくはまだ結婚していないから、夫婦がどうして特別なのか、よくわかりません」
(我還沒結婚,夫妻之間為什麼特別我也不了解)
しばらくして、こう付け加えた
(他停頓了一下,又補上一句)
「それに、イブねえさんとテオ兄さんは、普通の夫婦とは違うから」
(而且,夏娃姐姐和特爾哥跟普通的夫妻不一樣)
テオの瞳がかすかに揺れた。
(特爾的眼神出現了動搖)
「イブは普通の人とは違うから、と言う意味か」
(你是說夏娃不是普通人的意思嗎?)
ジョシュアはつばを飲み込むと、早口に言った。
(喬書亞吞了口口水,快速回答)
「否定することはできません」
(這不能否認)
テオの手が不安定に動き、止まった。ジョシュアは微笑を浮かべながらその動きを追っていた。
(特爾的手不受控制地顫動、然後停止,喬書亞則面帶著微笑看著他的舉動)
「他でもないおまえに、イブがどんな人間だったか説明しなければならないのか?」
(我難道要對不是外人的你解釋夏娃到底是怎麼樣的人嗎?)
「イブ姉さんがどんな人だったかぼくが知らないわけもないでしょ。ぼくが言いたいのは」
(姐姐她是怎麼樣的人我相當清楚,只是,我想說的是…)
そこで言葉を切ると、ジョシュアは飴をかみ砕いた。
(話在這裡斷掉,喬書亞咬碎了口中的糖)
「そんな姉さんを兄さんがどうして愛したかということです」
(特爾哥為什麼會愛上那樣的姐姐呢?)
------Demonic4 Sunburn 188
衝突的開始,特爾是很悲哀的一個人...